「っ、ん、やめてって、」

「すぐったいの?それとも……気持ちいいの?」

最後の言葉をわざと耳元で呟くから、身体全部がゾクッとして。

恥ずかしさと悔しさで熱くなる顔を見られたくなくて咄嗟に目を逸らせば、

「……ちゃんとこっちみて」

再び顎に指が添えられて、すぐに無理やり目を合わされて。

「……っ、」

『危険』

身体も脳も、全身がそう言っている。

今回ばかりは私の力ではどうすることもできないのかもしれない。

終わった。

少しでも彼を信じた私がバカだった。

ゆっくりと彼の顔が近づいてきて。

キスされてしまう。

その瞬間、唇に力を入れたままギュッと目を瞑った。

「……」

「……」

「…………郁田さん、」

え?

予想外。

今日一番の優しい声で名前を呼ばれて、恐る恐る目を開けると、

今まで見たことない表情で、夏目くんがこっちを見ていた。

笑っているけどすごく苦しそうな、切なそうな。

私の手首を強く固定していた手が今度は優しく私の髪を撫でる。

「ほんと、郁田さんって俺をおかしくさせる」

「へっ、」

「この状況で手を出さないでいられるんだから、」

夏目くんのその言葉への反応の仕方がわからない。

一体、どういうこと?