「まぁまあそんな怒んないで。いつもその長い髪自分で乾かしてるんでしょ?たまには誰かに乾かしてもらってもいいじゃん。俺、やってあげるの慣れてるし」
『慣れてるし』
そのセリフにイラッとする。
女の人の髪の毛を乾かすことなんて夏目くんにとってはなんてことないぐらいしてることだって言いたいの?
どういうつもりなわけ?
「はぁ……。あぁ、もう、わかったよ。勝手にして」
夏目くんの言葉に、ヤケになってしまってそう答えてしまった。
夏休み早々風邪を引いて無駄になるのだけは嫌だし。
彼の方へと歩いて、ベッドにドスンと腰を下ろす。
「素直な郁田さん、かわいいよ」
「黙ってさっさと乾かしてよっ」
「はいはい」
終始ヘラヘラ笑いながらの夏目くんがドライヤーのスイッチを入れて、
私の髪が彼の指の間を通る。
湿った髪が温かい風に乗せられて。
いつもの私の髪から香る匂いとは違う香りがフワッと鼻をくすぐる。
夏目くんの……匂い。
まさか自分の髪の香りが嫌いな人と同じになるなんて。
彼が真正面にいて目が合うのも嫌だけど、どういう顔をしてるのか全くわからない今の体勢もそれはそれで怖い。
早く、終わってくれないかな。



