それから数分。

郁田さんたちが今度はモルモットコーナに向かった。

「うわーー!見てっ!!かわいいっ!!」

「……っ、」

モルモットを抱き抱えたまま、こちらに満面の笑みを向けてきた郁田さん。

と、思ったらすぐに表情をいつも見せるものに変えた。

「あっいや、……ごめ、間違えた、その、」

多分、隣にいたのが俺ではなく、秋津さんだと思って間違えたって感じだろう。

パッと目線を上げて向かいで泉と話している秋津さんを確認した郁田さんは、

恥ずかしそうに頬を赤らめて口ごもった。

無邪気な笑みを初めて、俺に向けてくれた。正確には友達と間違えてだけど。

その表情があまりにも可愛らしくて、初めて、女の子に、欲望以外の感情でドキッとした。

「ふっ、なにも間違ってないでしょ。可愛い。モルモット」

「うん、まぁ、」

「モルモット見せてきた郁田さんも」

「ちょっ……別に夏目くんに言われても嬉しくないからっ」

そう言って、いつものムスッとした態度に戻るけど、

耳の先が赤くなっているのを見逃さなかった。

ほんと、素直じゃない。