これはもうきっと『執着』だ。

初めて声をかけた時、一度だけでよかった。

あの時、コロッと俺に落ちて俺のお願いを聞いてくれていれば、

俺だってこんなに郁田さんにつきまとうことなんてなかったはず。

俺をみる時はいつだって険しい目つきで、反抗的なくせに。

今、隣にいる泉とは、くったくない笑顔で話していて、

俺への態度とのあからさまな違いにだってイライラする。

俺に興味ないなんて顔するくせに、弱いところ触れられたら、

急に助けを求める潤んだ瞳で見つめてくるから。

きっと自覚なんてこれっぽっちもない。

身体を貸してほしい、初めはそんな気持ちしかなかったはずなのに。

もっといろんな顔をみたくて。

どんな表情も俺以外に見せないでほしくて。

彼女の周りから固めていこうって作戦だったけど、思った以上に郁田さんは手強い。