トワイライト(下)


愛しい時間は瞬く間に過ぎ去り、直ぐに日常に紛れて週末の忙しさが訪れる。

受付から姿を消した彼女、代わりに業務を行う懐かしい顔、言葉も交わさないままに事務室に向かう。

「お疲れ様、今日から一ヶ月宜しく……土産置いといたから、彼氏と取り合いするなよ」

「ありがと……此方こそ宜しく」

短い会話をして着替えを済ませ、熊本名物などと書かれた紙袋を手に店を出る。

待ち合わせてたかのように彼は軽く手を上げて歩み寄り、自然に手を取り合って駐車場まで足を運んで行く。

磨き上げられた真新しい車の助手席が開かれ、流れに沿って乗り込んだ彼が話し掛けてくる。

「今度休み取って、茅紗の田舎帰ろうか……」

そう言いながら優しく紙袋を手にして後部座席に置き、エンジンを掛けて車を走らせていく。

「何時でもいいよ、合わせられるから」

走り出した車が一つ目の信号で停まり、フロントガラスを眺めながら彼が告げる。

「俺……朝焼けより夕焼けの方が好きかも」

その言葉に目線を投げた窓の外、三層よりも一つ色の増えた彩りが広がっていた。

そっとシートの脇で小指を繋ぎながら彼が呟く。

「夕焼けだったら、こうして見ることも多いし、何より茅紗と長く居られる気がするから、俺は好き」

目の前に在る深みを増した群青色、薄い紫の下に伸びる白に暖色系が染まる空、雲の隙間から太陽の梯子が下りている。

それは、彼の温もりを絶えず感じて愛しさが溢れ出すような景色だった。