「それにしても姉ちゃん、最悪だな。何考えているんだろう。」

哲也はみどりに強い怒りを感じていた。
 
「うん。でもお姉さん、一人で寂しかったんじゃない?」

由美は控えめに言う。
 
「だったら別の人見つけて、再婚すればいいんだよ。また戻るって、全然懲りていないだろう。」

哲也の声が少し荒くなる。
 

「そうだけど。人って弱いものだよ。」


由美は言う。哲也ははっとして由美を見つめた。

本当にそうだ、と哲也は思う。

わかっていてもできない。弱い自分に負けてしまう。

だから許す。自分のことも他人のことも。
 

大翔にも気付いてほしい。

弱い自分を超えて強い自分になることに。

いつか必ず、生まれてきてよかったと思えると信じてほしい。

そんなことを考えながら、哲也はいつの間にか眠っていた。