「ヒロト、昨日大宮駅で、お前の母ちゃん見かけたよ。」

朝、大翔は正典に言われる。
 
「ああ。大宮で働いているから。」

正典とは小学生の時から親しくしている。

大翔の家族のこともよく知っている。
 
「俺には気付かなかったから、挨拶はしてないけど。お前の母ちゃん、相変らず綺麗だな。男の人と歩いていたよ。」

正典の言葉に
 
「へえ。会社の人かな。」と大翔は曖昧に答える。
 
「結構、親しそうだったよ。お前の親父さんだったりして。」

大翔が父親と会っていないことを正典は知っている。
 
「まさか。」大翔は笑って言う。
 
「それとも彼氏か。」正典は続ける。
 
「そうかもね。母ちゃん、まだ若いから。」

と言って大翔は苦笑した。