大翔はそれをずっと不満に思っていた。

いくら子供でも納得のいく理由を説明してほしかった。
 
「知りたいと思わない?両親だけこそこそ会っているとしたらムカつくだろう?」

正典の言葉に大翔は頷き、
 
「でも、どうしようもないよ。」と言った。
 
「ヒロト、大宮駅で母ちゃん達、待ち伏せしてみなよ。」

正典の言葉に大翔は笑い、
 
「無理だよ。探偵じゃないんだから。」と答えた。
 
「大丈夫だよ。大宮駅、すごく混んでいるから。柱の陰とかにいれば見つからないよ。それに、この前会った時も昨日も木曜日なんだ。多分、木曜に会う約束だよ。」

正典の言葉に大翔の心は少し動いていた。

もし会えるのなら、もう一度孝明に会いたい。

そして聞いてみたい。

何故急に大翔の前から消えてしまったのか。

黙って考え込む大翔に、
 
「俺も付き合うから。一緒に待っていてあげるよ。」

と正典は言う。
 
「正典、楽しんでいるだろう。」

大翔は笑ってしまう。

正典は大翔が承諾したと思い、
 
「来週の木曜日、決行だからな。」と言う。
 
「塾はいいの?」

その気になった大翔が遠慮がちに聞くと、
 
「ヒロトの人生の方が、塾より大事だよ。」

と正典は笑って大翔の肩を叩く。
 
「大げさだな。まだ会えるかどうかもわからないのに。」

でも大翔は一人なら、そこまでする気にはならないだろう。

正典に背中を押されたことに感謝していた。
 
「会えるまで付き合うから安心しろよ。」

得意気に言う正典。
 
「絶対、正典、楽しんでいるよ。」

大翔は笑ってしまう。

孝明に会えるかもしれない。

そう思うと大翔の胸は高鳴った。