「お父さんとお母さんが離婚したことは、大翔と血が繋がってないからじゃないよ。お父さんがお母さんを信じられなくなったからだ。大翔達と離れることは悲しかったよ。」

孝明の言葉を聞きながら、大翔はじゃくり上げる。
 
「騙されたままならよかった。でも、知ってしまったら平気な顔では暮らせない。お母さんにも辛く当ってしまうだろう。お母さんも負い目を感じて、お父さんにビクビクすると思う。そんな冷たい家庭は、大翔達を不幸にすると思った。」

孝明は静かに続けた。
 
「大翔には、ずっとお父さんの子供だと思っていてほしかった。お父さんを恨んでも。そのまま大人になってほしかったんだ。」
 


「でも、俺。俺の父親はお父さんだけだから。」

大翔は泣きながら言う。
 
「ありがとう。お父さんも、大翔のお父さんは俺しかいないって思っているよ。たった6年しか一緒にいられなかったけれど、大切なことは、ちゃんと教えた自信があるよ。」

孝明は大翔の隣に移って、そっと大翔の肩に手を置く。
 
「お父さん。」

と言って大翔は泣きじゃくった。

静かに泣き続ける大翔の背中を、孝明はそっと擦ってくれた。