なんで。

どうしてこうなったんだろう。


「ねえ見て、綾原くんと佐伯さんだ。ほんとあのふたりいつ見ても美男美女すぎる」

「いやそれね、羨ましすぎて死にそうあの顔面になりたい」


コソコソと噂する周りの子たち。

聞こえるように言ってるのかそうじゃないのかはわからないけど、何にせよきまりが悪い。


「恭成、私本当に友達いないんだけど……」

「良いんじゃないの、お前は作らなくて」

「なんでそんなこと言うの」

「なんとなく」


入学から1ヶ月。

友達が1人もいません。




事の発端は入学式。

その日は中学のときと同じように、恭成と一緒に登校していた。


『あっ、ごめんなさい!』


校門の前で、知らない子とぶつかってしまって。


『ごめんね、大丈夫?』


そうやって普通に謝ったつもりだった。

そうしたらその子が急にあっ! と叫んで。


『もしかして綾原恭成さんと佐伯優奈さんですか!?』

『え……、そうだけど、なんで?』

『優奈、知り合い?』

『いや』

『Twitterでオリエンテーションのときの画像めちゃくちゃ回ってますよ! 美男美女って有名人じゃないですか!』


オリエンテーション。

それは入学前に合格者のみで行われた入学説明会のようなもので、学校の細かな概要を聞きに行くものだった。

でも写真を撮られた覚えはない。


『ほら!』


そう言ってその子がスマホで見せてくれた画像には、信じられないことが書かれていた。


『UG69期! ミスコン候補者入学! 期待の新生佐伯優奈!』


画面を見るに、Twitterらしかった。

そんな文字とともに、オリエンテーションのときの私の盗撮写真が貼り付けられていた。

UGというのは上西実業高校の略で、UJにするとすぐ他人にバレてしまうからUGにしたらしい、とその子が教えてくれた。


『これ、Twitter? 私Twitterやってなくて』

『ええ、そうなんですか!? これリツイート150もされてますよ!』


ネットの力は怖い。

恭成も同じように、テンプレのような謳い文句とともに、盗撮写真がアップされていた。


『恭成知ってたの?』

『知ってたらお前と一緒に来ない。騒ぎになるの見えてるだろ』

『だよね』


その日からだった。

私たちは入学式当日からやはり注目の的となってしまい、どこに行こうにも何をするにも騒がれる。

美男美女だと持て囃されて、遠いクラスから見物人が来る。

友達を作ろうと頑張って何度も話しかけた。

だけど、受け答えには謎に敬語を使われる挙句


『きゃー! 佐伯さんに話しかけられちゃった!』


なんて友達としてすら見てもらえない始末。

正直美男美女とかどうでも良くて、私はただ単に友達が欲しい。

かわいいって褒められることは嫌なことじゃないけど、嬉しいことじゃない。

注目を浴びたり、目立つことは苦手だ。

こうやって行く先々に人がいると、心を許せる友達の1人も作れない。