「……やっぱりあんたたち、どっかで繋がってるのかもね」


「え?」




サラの言葉に、優奈がきょとんとした顔で首を傾げる。




恭成(きょうせい)も上西なんだよ」




サラの代わりに隼瀬(はやせ)が答える。


優奈はびっくりして恭成を見た。


恭成は頭痛に悩まされているかのような苦い表情をして、顔を手で覆っていた。




「絶対被らないと、思ってたのに」


「……俺も。被らないと思ってた」




優奈の消え入るような声に、恭成もため息をつきながら返す。


2人ともある事情から、絶対に誰とも被らない高校を選択したつもりだった。




「何? そんなに嫌なの?」




サラが怪訝そうに2人の顔を覗き込む。




「……いや。別に」




恭成はいつもの無表情に戻り、素っ気ない言葉を吐き出した。




「……ごめん、恭成」


「……何が。別にいい」


「でもシェアハウスのことも結局、私のせいで__」


「優奈」




優奈以外の3人の声が重なった。


3人に同時に名前を呼ばれた優奈が、不安に揺れる瞳を見開く。




「それは、言わない約束でしょ」




サラが苦しそうな笑顔で、絞り出すようにそう言った。




『__佐伯さんは、そんなことしません!』




優奈の脳裏に、ある日の記憶が蘇ってくる。


記憶の中で自分を庇うため声を荒らげるサラと今のサラは、同じ顔をしていた。




「……ごめん。もう何も言わない」




優奈は無理やり笑顔を作り、3人に笑いかける。


途端に、3人がほっと安心したような顔をした。




「よーし! 4人暮らし楽しみだなあ」


「でも正直今でも4人暮らしみたいなもんじゃん。サラ全然食器洗わねえけど」


「お前が甘やかすからだろ。俺と優奈は洗ってる」




やがて楽しそうに会話する4人の影は、桜の舞い散る暖かな春の空気にゆっくりと溶けていった。