男から目をそむけ、俯く。
すると
鎖骨の下――左胸の上あたりに
黒い文字で
アルファベットの〝S〟と
それを囲う星マークが、ついていることに気づいた。
タトゥー……みたいな。
マジックで描いてあるような感じではない。
刻まれているような。
S……って
なにかのイニシャル?
誰の?
きっとわたしは
思い出さなければならない。
それは、
二度と思い出したくないことかもしれない。
苦しいこと。
悲しいこと。
忘れてしまいたいことかもしれない。
楽しいことだけしていた方が
ラクになれるのかもしれない。
でも、それじゃイケナイと思う。
片想いが簡単にうまく実らないように
人生は思い通りにいかないものだ。
そんなことの方が……多い。


