「ボクは、ただ。こうして人間界に溶け込んでるヤツらがいること知ってもらおうと思っただけ」
雛の隠れ家に案内してもらえたこと、嬉しいよ。
「帰るぞ」
セロに腕を引かれ、店を出る。
「ちょっと……雛を置いてくることないじゃん」
「かまわん。これから食事するだろうからな」
「え?」
「じきに提供者がやってくる」
――――提供者?
「あいつに血を分け与える人間だ」
「……分け与える?」
献血に向かうひとと同じかな。
必要な雛に協力を?
「その対価としてあいつは……」
セロが言葉を止めたとき、向かいから綺麗な女性がやってきた。
わたし達は階段を上り地上へ戻り
彼女は階段を下り不思議な空間へと足を踏み入れていく。
今の女性が雛の提供者?
それとも、彼女もまた、稀少な存在なのか。