「ここが、雛が連れてきたいって言ってた場所?」
とある休日にやってきたのは、路地裏の喫茶店だった。
見た目はごく普通のお店。
しいていうなら
地下へと続く階段を下りたその先にあったのが、なんだか神秘的だった。
「うん。夜にはバーになる。ボクの隠れ家的スポット」
黒髪の上品なお嬢様に扮した雛。
私服姿もとても美しいわけだが、口調が学校にいるときとは別人だ。
「バー……ってお酒飲むところ?」
「表向きはね」
そのバーに集うのは
人間の姿に化けた、人間じゃない何者かなのだという。
「刹那をこんな場所に近づけるな」
ムスッとしたセロがいう。
「せっかくの刹那とのデートについてこないでよ」
デート……なのか!?
「こいつは俺のオンナだ」
「横取りする気ないってー。味見はするかもだけど」
味見もダメだよ?
「セロちゃんがいるとみんなビクビクするからさ。おとなしく帰ったら?」
そんなに恐ろしい存在なのかな、セロって。