「いいや」
――――え?
「貴様にそれを求める気はない」
「……そっか」
わたしに、求めない?
だったら誰に求めるの?
「お熱いこと」
(その声は――……)
校門をくぐる手前で聞こえてきたのは、雛の声。
「おはよう。刹那」
すっかり綺麗な女の子にしか見えないが、騙されてはいけない。
雛は、男だ。
男なのだ。
(大事なことだから2回言っておく)
「不愉快だ。視界から消えろ」
「セロ、王子キャラ卒業したの? ここ学校だよ。みーんな見てるのに」
「そんなことより貴様はオスに戻ったらどうだ」
「ふふ。ボクは、いつだってオスだよ? さ、刹那。教室行こ」
手を繋ごうとしてきた雛が
「おっと。今、刹那に触れるのは危ないかも」
手を引っ込めた。


