それにしても、口を切ってやるーとか。
アコ先輩は普通じゃなかった。
"王子"に執着していた。
あれが彼女なりの"愛の形"だとでもいうのか。
「刹那」
ふいに、背後から、抱きしめられる。
「い、痛いよセロ」
鏡ごしに目が合った。
「こういう時。女は泣きつくものだ」
え?
「どうして無理をする」
無理をしていないといえば嘘になる。
だからといってセロに泣きつくのは……
悪魔にすがるのって、どうなの?
それもわたしを狙っている悪魔に。
「助けが必要なら、俺を呼べ」
「……呼ぶ?」
「ああ、そうだ。どこにいても飛んできてやる。たとえ恐怖で声がでなくとも。心の中で強く俺を思えば――必ず届く」
そういう不意打ち、卑怯すぎるんだけどなあ。
「わかったか」
「……うん」