わたしが、彼の名前を知るのに
そう時間はかからなかった。
「今朝、黒羽根くん見たんだけど。今日も王子すぎた」
周りの女の子たちは、口を開けば王子の話ばかり。
わたしがぶつかったのは
黒羽根聖狼、という男の子だろう。
みんなの王子様。
きっと、もう話すこともない人。
……って
【ごめんね】
あれは話したうちに入らないか。
「あー! 王子!」
「そっかー。次、体育なんだ」
廊下の窓から下を見下ろす女の子たち。
王子の追っかけをしている子は多いのだ。
外を歩いているのは、D組。
つまり
そこには、タスクがいる……!


