優しく髪を撫でられると、不思議と心が落ち着いてくる。
あんなに怖くなっていたのに。
「戻りたい?」
「え?」
「セロの秘密を知る前に」
あの悪魔にされたヒドいことを忘れられるなら、忘れてしまいたい。
キスがなかったことにできるなら、したい。
「ごめんなさいね。こんなことを聞いて『戻りたい』って返事されても、あたしはなにもしてあげられないし。過去に戻るなんてゲームの中の世界みたいなこと、現実ではできないのだけれど」
平和に過ごせたら、それは幸せなことだ。
「ただ。危険ととなり合わせで生きているっていうのは。誰しもがそうなんじゃないかしら」
「……誰しもが?」
「帰り道、事故に合ったり。夜道でさらわれてしまったり。駅で階段をふみはずしたり。突然、心臓が止まったり――この世に生まれる前に命が尽きてしまったり。そんな可能性の一つ一つがけっして高くないにしろ、ゼロではないでしょう? そういうことって。なんの前触れもなく起こり得るのよ」
あんなに怖くなっていたのに。
「戻りたい?」
「え?」
「セロの秘密を知る前に」
あの悪魔にされたヒドいことを忘れられるなら、忘れてしまいたい。
キスがなかったことにできるなら、したい。
「ごめんなさいね。こんなことを聞いて『戻りたい』って返事されても、あたしはなにもしてあげられないし。過去に戻るなんてゲームの中の世界みたいなこと、現実ではできないのだけれど」
平和に過ごせたら、それは幸せなことだ。
「ただ。危険ととなり合わせで生きているっていうのは。誰しもがそうなんじゃないかしら」
「……誰しもが?」
「帰り道、事故に合ったり。夜道でさらわれてしまったり。駅で階段をふみはずしたり。突然、心臓が止まったり――この世に生まれる前に命が尽きてしまったり。そんな可能性の一つ一つがけっして高くないにしろ、ゼロではないでしょう? そういうことって。なんの前触れもなく起こり得るのよ」


