孝明が両親に離婚の報告をすると、
 
「若過ぎたから心配だったのよ。二人も子供がいるのに。我慢できなかったの?」

と母に責められた。

離婚の本当の理由を孝明は言わなかったから。

でも、
 
「心配かけてごめん。これからはちゃんとするから。」

と言う孝明に、母はそれ以上何も言わなかった。
 
久しぶりの東京は、少しずつ孝明を癒してくれた。

学生時代の友達や同期入社の友達ともゆっくり会えた。

新しい部署での仕事は覚えることもたくさんあり、忙しさが孝明を救ってくれた。
 
毎日は当たり前に過ぎていく。

朝起きて、仕事に行き、夜になれば眠る。

心の傷も悲しみもそんな日々が、少しずつ麻痺させてくれる。

忘れられるわけはないけれど。