「花乃、今日のメイクも可愛い。キラキラー」
春海はいつもながら褒め上手だ。

「ありがとう、春海こそいつもより気合い入ってない? 肌つやつやだし、髪型もすごく似合ってるよ」

「わたしはもう、プロ頼み。いつもお願いしてる美容師さんにちょっと無理言って朝一からメイクまで全部お願いしちゃった。今日、ちょっといい出会いがないかなー、なんて」
ぺろっと舌を出す仕草も可愛いな、と同性の目から見ても思う。

「あるといいね」

「うん、にしてもやっぱりプロのメイクは違うよね。下地とファンデーションを薄く重ねていくだけで、肌がすごく綺麗になるからびっくり」
春海が嬉しそうに頬に手を添える。

「そうなんだよねー」
それがプロの技だ。わたしもときどき、香帆ちゃんが魔法の手を持ってるように見えてしまう。

「まあ今日はスピーチも余興も頼まれてないし、気楽といえば気楽だよね」

本当にそうだ。新郎側の招待客のひとりの存在さえなかったら。