「行きたいとことか、なにかリクエストってある?」

「ええと、あまりないんですけど」
言いながら、「特にない」とか「あまりない」という返事ばかりしていると気づく。
せっかく訊いてくれてるのに。こうやって自分がないから飽きられちゃうのかな。

「友達とは、人気の映画を観に行ったり、アフタヌーンティーでプチ贅沢したり、デパートでコスメを見るのも好きです」
慌てて言葉を重ねるけど、なんともありきたりだし男性とのデートにコスメって。言いながら自分に突っ込んでしまった。

花乃らしいな、と彼がつぶやく。
「都内をのんびり回る感じでいいかな」

「お付き合いします」

直斗さんがまず車を向けたのは、代官山にある花屋だった。
「日本でも数少ないと思う、アフリカのバラを扱っている店なんだ」
道すがら話してくれる。

「アフリカのバラですか?」
イメージが浮かばない。