メイクを仕上げて小さな充足感とともに洗面所を後にする。
「お待たせしました」と足早にリビングの直斗さんのもとへ。

ソファにかけている彼が、わたしの全身をスキャンするようにすばやく視線を走らせる。
ピリッとした緊張感。

「ちょっと待ってて」と彼が自分の寝室に姿を消した。

ほどなく戻ってきた彼は、なにかがさっきと違うと感じるのだけど、判然としない。

「靴下だけ替えてみた」と短く言われる。

「あぁ」ぽんと両手を叩く。直斗さんの靴下が芥子色のものにはき替えられていた。

「リンクコーデ、っていっても靴下だから見えなくなっちゃうけど。気分だけでも黄色を取り入れたくなって」

彼に認められた心地で、出発前から嬉しくなる。
空は晴れ渡って、絶好のドライブ日和だった。

「天気が良くてよかったですね」
ハンドルを握る彼に話しかける。

そうだな、と軽くうなずいて「曇りとか雨がしとしと降ってるときのドライブも悪くない。ぼんやり考えごとしながら車を走らせたりしてる」

「たしかに気持ちが休まりそうですね」
物思いにふけりながらひとり車を走らせる直斗さんの姿を頭に描く。彼ならどんな場面でも絵になることだろう。