【完結】その口止め料は高すぎますっ

カフェを後にして、そのままスーパーマーケットに向かった。
自然な仕草で、彼がカートを押してくれる。

ふたりで献立の相談をしながら食材を選んで、カートに入れていく。こうしていると本当のカップルみたいだ。

そうだといいのにと思ってしまい、偽りの関係だという現実に、チクチクと胸を刺される。

会計を終えて、直斗さんが大きい袋を、わたしが小さい袋を下げて帰路につく。

「休日ってどう過ごすことが多いですか?」
帰る道々、彼に訊いてみた。

いろいろ、と直斗さん。
「ジムに行ったり、ドライブしたり、気になる展示会があったら観に行ったり、デザインがひらめいてデザイン画を描くのに没頭してる日もあるな」

うーん、さすがトップデザイナー。

「花乃は?」

「えーっと、これといって。休日の外出だと、オフィスだとできない遊んだメイクができるので、それが楽しみといえば楽しみで」

「花乃らしいな」
彼が柔らかく笑む。そんな横顔を見上げて、わたしの口元も自然とほどける。
あぶないな、と胸のうちで小さくつぶやく。彼が隣で笑ってくれるだけで嬉しくなってしまう。