近所のオープンカフェでサラダプレートを頬ばりながら、彼にそれとなく聞いてみると「なりゆき」とあっさり返された。
「退院してもしばらくは療養生活が続きそうだし、まあ気長に付き合ってよ」
気長に…持つだろうか、わたしの心。
素敵な男性と一つ屋根の下に暮らして、恋人を演じながら好きになってはいけないって、いったいなんの拷問なのか。
「花乃も少しは慣れてきたみたいで、頼もしいよ」意味ありげに彼がつぶやく。
「そ、そんなに簡単には…」
「そう? じゃあ回数を増やさないとな」にんまりと告げられる。
「心臓が持ちませんっ」
彼の言動に翻弄されっぱなしだ。
そんなわたしの心の均衡を危ういところで保ってくれているのは、皮肉にも過去の痛手だった。
好きになったら負け。後ろ向きな教訓は、直斗さんに傾きそうなわたしの気持ちの強固なつっかえ棒になっていた。
「退院してもしばらくは療養生活が続きそうだし、まあ気長に付き合ってよ」
気長に…持つだろうか、わたしの心。
素敵な男性と一つ屋根の下に暮らして、恋人を演じながら好きになってはいけないって、いったいなんの拷問なのか。
「花乃も少しは慣れてきたみたいで、頼もしいよ」意味ありげに彼がつぶやく。
「そ、そんなに簡単には…」
「そう? じゃあ回数を増やさないとな」にんまりと告げられる。
「心臓が持ちませんっ」
彼の言動に翻弄されっぱなしだ。
そんなわたしの心の均衡を危ういところで保ってくれているのは、皮肉にも過去の痛手だった。
好きになったら負け。後ろ向きな教訓は、直斗さんに傾きそうなわたしの気持ちの強固なつっかえ棒になっていた。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)