【完結】その口止め料は高すぎますっ

いざ直斗さんのマンションで暮らしてみると、たとえばドライヤーひとつとっても、性能はすごくいいのだけどわたしの手にはどうにも大きかったり。
調理器具も使い慣れたものが恋しくなってしまう。

大口の物を男性スタッフが、小物は女性スタッフが担当して、荷物がトラックに積まれたら、わたしたちも車で直斗さんのマンションにとって返す。
あれやこれやとわたしの持ち物を持ち込んでも、余裕で収まる彼のマンションのスペースが頼もしい。

すべて完了して引っ越し会社のスタッフが引き上げていったのは、午後二時を回った頃だった。
私物が揃って暮らしが整ったと同時に、いよいよ逃げ場がなくなったと気づかされる。

「ちょっと遅くなったけど、ランチ食べに行こうか」

「そうしましょう」

来週には直斗さんの婚約者として、彼のご両親と対面するのだ。
それにしても…いつまで続けるんだろう?