【完結】その口止め料は高すぎますっ

引越しの話をされたとき費用の半分を持つと主張したのだけど、直斗さんに「じゃあ引越し代」とキスを求められて終わってしまった。
このやりとりがわたしたちの定番になりつつある。…って、それでいいんだろうか。

今日の彼は、白いシャツにセーターを重ねた休日ファッションだ。シャツの襟は短いスタンドカラーで、セーターはブルーとグリーンを合わせたような色の美しさが目を引く。
何気ないようでいてセンスが光る着こなしは、さすがデザイナーだ。

彼が運転する車で、わたしのマンションに向かった。
すぐに男女合わせた引っ越し会社のスタッフも到着して、手短な打ち合わせの後、てきぱきと作業に取りかかった。
こちらは、持ってゆくものとそうでないものを決めるだけで、あとは梱包、搬入、収納まですべてお任せという行き届きぶりだ。

直斗さんのマンションで使わせてもらっているベッドに不満はないので(むしろ自分のベッドよりずっと寝心地がいい)、ベッドは置いていくことに。
テーブル、椅子、冷蔵庫も必要ないけれど、それ以外はほぼ運んでもらうことにした。