「少しずつ慣れていこうと言いたいところだけど、残念ながら時間がない」

ふたたび彼に抱き寄せられる。
さっきよりはコチコチになってない、と思いたい。

あごに手をかけられる。

「リップは塗っていい」彼のささやきが耳をこする。
「それ以外で唇に触れていいのは俺だけだ」

唇が重なる。
わたしは拒まなかった。それが不思議なようにも、当たり前のようにも感じる。

コスメだけがわたしたちの秘密を知っている。そんな気がした。