「空間デザインを依頼されることも多いから。模型とかももちろん使うけど、色彩の美しいデザイン画もひとの心をつかむ。なかにはそのまま店に飾ってくれるクライアントもいて、デザイナー冥利に尽きるな」

小原さんが描く手を止める。
内心その続きが見たいと思ってしまう。彼が描く世界のその先を。

「とはいえ本来は肌にのせるものだ。使い切れないし、牧瀬さんに使ってもらえば本望だろう」

「そんな…いいんですか」
美しいコスメがよりどりみどり。夢のような空間だ。いっときとはいえ、自由に使っていいなんて胸が踊る。

「使用料はそれなりに」

どういう…と考える間もなく腕が掴まれ、小原さんの腕の中に引き寄せられた。
身体が硬直して呼吸が止まる。

慣れて、と耳元に口を寄せて彼がささやく。
「婚約者なんだ。自然と腕が触れ合ったり、手を取ったりすることもある」