【完結】その口止め料は高すぎますっ

「なるほどね」
聞き終えて、彼がうなずく。

「そういえば、小原さんはどうしてあの場に?」
ふと気づいて訊いてみる。

「マグナスとはイタリア留学時代からの付き合いなんだ」

あのデザイナーのマグナス・デルモンド氏と知り合いだとは。小原さんのバックグラウンドに驚くばかりだ。

「マグナスにローンチパーティーに誘われたもんで。面白そうだからパスをもらってバックステージも覗いてたら、ひょっこり知っている顔に出くわして」
片方の眉をちょいと動かして意味ありげな視線を投げてくる。
「———うちの会社、バイト禁止なのにな」

「で、できればこのことはご内密に———」
フォークを固く握って、うつむくしかなかった。
以前、副業していたことが明るみになって注意処分を受けたひとがいる、なんて社内の噂話で聞いたことがあったっけ。そのときは他人事だとばかり思っていたのに、まさか自分が…