明けて、月曜日の朝。
当然のことながら、気が重くてしょうがなかった。

思えば学生の頃から、成績はともかく素行だけは褒められていた「いい子」タイプだったから。

規律に外れたことをしただけでも後ろめたさがあるのに、それをひとに知られてしまうなんて。

弱みを握られた、ことになるんだろうか。あの小原直斗さんに。

わたしが勤める四商デザインテックは、建築、インテリア、プロダクツなど幅広い分野でデザインを手がけることで知られている。
社の中枢というべきデザイン部で、トップと冠されるデザイナーはごく数人だけだ。
小原直斗さんは29歳にして、そのうちのひとりだった。

わたしが所属する製作部は、デザイン部から回ってくる図面を起こしたり、資材を発注したりといった業務を担当している。
小原さんとも何度か業務上のやりとりはあったけど、彼がわたしの顔と名前を認識していること自体驚きだった。