ケースを開けてみるとリップがセットされていた。
くるりとひねると、鮮やかなレッドピンクのリップが顔を出す。繊細に華やかにくちびるを染めてくれそうな。
直斗さんがわたしに選んでくれた色だから。間違いない。

わたしが好きなコスメで、わたしの名にちなんだ花の柄で、どこまでも深くまっすぐな彼の想いに、どうしても視界が潤んでしまう。

「受け取ってくれてよかったよ」
ぽふ、と彼がわたしの頭を撫でてくれて、ようやく涙は止まってきた。

「うちの親にはこうして会ってもらったから、そろそろ花乃のご両親にも挨拶に行きたいんだけど」

「うん、お父さんとお母さんに都合を聞いておくね」
ふたりともびっくりするだろうな。香帆ちゃんと、怪我の一件で心配かけちゃった春海と詩織にも連絡しないと。

「これから忙しくなりそうだな。いろいろ決めないといけないこともあるだろうし」

「直斗さんとならだいじょうぶ」
迷いなくそう口にすることができた。

「そうだな」と彼が微笑む。

未来へと、ふたりの道は続いてゆく。