その週末、わたしにとっては三回目になる、直斗さんのお父様のお見舞いに行くことになった。

誰かも自分も欺かないお見舞いという意味では初めてで、それはそれで新たな気持ちになる。
お父様もあとわずかでめでたく退院とのことで、これが最後のお見舞いになりそうだ。

「だいぶ痩せたから体力を戻すのに時間はかかりそうだし、定期的に検診は受けないといけないけど、それでも自宅に戻れるから嬉しそうだ」
そう言う直斗さんの表情も晴れやかだ。

見覚えもでてきた病院に到着して、エレベーターで病室に向かう。
扉が開くと、思いがけずエレベーターホールにお母様の姿があった。大ぶりのスーツケース二つに挟まれるように立っていた。

「あら直斗、花乃さん、早かったわね」

「どうしたんだよその荷物」と直斗さん。

「入院してたときの荷物よ。パジャマだ室内履きだ本だって、なんだかんだで増えちゃって。一度じゃ運びきれないから、宅配で送ることにしたの。集荷場所が一階にあるんですって」

「言ってくれれば車出したのに」