白い天井に、腕に刺さっている点滴の針。

私はどうしてこんなことになっているんだろう。

「あの、私」

「ホテルで倒れられたんですよ」

階段を降りている時、目の前が真っ白になったところまでは思い出せたけど、その後の記憶はない。

「たまたま近くにいたので、病院までご一緒しました」

「ありがとうございます」

「寝不足と心労とのことだったのですが、階段を転げ落ちたので念のため検査をしました」

昨日の夜、眠れなかったのが悪かったかな。

修学旅行中だったのに先生や皆んなにも迷惑かけたよね。

って、飛行機の時間!
今日のお昼の飛行機で東京に戻るんだった!

「あの、今何時ですか?」

「5時過ぎです」

え?5時って17時のこと?
飛行機もとっくに飛び立って、東京についてるよね。

「10時間ほど寝てらっしゃいましたよ」

10時間も?

「学校の皆さんは先におかえりになられました。先生と華さんのお祖母様に承諾を得て私が付き添うことになりました」

「迷惑かけて本当ごめんなさいっ」

私ってほんと情けない。
情けなさすぎて涙が流れてくる。

桃田さん、会いたいよ。
やっぱり桃田さんがいなきゃ駄目だ。

桃田さんの為だと思ったのに、離れるなんてできない。

点滴をしていない方の手の甲を目の上に乗せても、流れる涙を隠せそうにない。

泣く私に気を使って、マキノさんが病室を出て行く音が聞こえた。

そして、しばらくすると点滴をしている方の手をギュッと握る温もりを感じた。

私はこの温もりを知っている。
夢にまで見たこの温もりを。

もしかしたら、また夢を見ているのかもしれないけど。

私はその手をギュッと力を入れて握り返す。