桃田さんは何事もなかったかのように、防犯グッズを袋の中から取り出して説明を始めた。

「これは、防犯スプレーだから使う時気をつけてね」

「は、はい」

「それからこれは緊急通報グッズで、このボタン押せば俺のスマホに通報されるから」

そう言って桃田さんに渡されたのは、SOSと書かれたボタンがあるグッズだった。

「いろいろありがとうございます」

「本当はずっと側で守りたいんだけど」

「仕事があるし仕方ないですよ」

そう思ってくれるだけで十分だ。
それに、こんなにたくさんの防犯グッズがあれば大丈夫。

「仕事があるからじゃないよ」

「え?」

「俺の側にずっと置いとけないでしょ?華ちゃんは物じゃないんだし」

桃田さんはやっぱり大人で、どこまでも優しい。

決して私を自分の所有物のようには扱わず、大事な恋人として扱ってくれてる。


「よし!じゃ行こうか」

そう言って車を発進させる桃田さん。
私を家まで送ってくれるのかと思っていたら、逆方向に走り出した。

「どこ行くんですか?」

「一番の防犯グッズを買いにいくんだよ」

桃田さんに連れて行かれたのは、防犯グッズなんか売っていなさそうなジュエリーショップだった。

こんなところに防犯グッズなんて売ってるのかな?
不思議に思いながら、桃田さんにエスコートされるようにお店の中に入った。

「いらっしゃいませ、桃田様」

黒いスーツを着た店員さんが私たちを出迎えてくれたけど、どうやら店員さんは桃田さんの事をしっているみたい。

店員さん奥のソファへと案内される。

「今日は彼女の指輪を見せて欲しい」

ゆ、指輪?
防犯グッズじゃなかったの?

店員さんは次々と指輪ん持ってきてくれるけど、絶対防犯グッズじゃないよね。

「桃田さん、防犯グッズじゃなかったんですか?」

「防犯グッズだよ。指輪はめてたら男除けになるでしょ」

そういう事だったんだ。
だけど、絶対ここのお店高いよね。

防犯のためだったらもっと安いものでいいのに。

「好きなの選んでいいからね!値段とか気にしないでね」

私の心を見透かすようにそう言ってくれたけど、目の前でキラキラ光る指輪たちに恐縮するよ。