好きです、先生。

「雛ちゃん!退院おめでとう!」

「若い子がいなくなると寂しくなるのぅ。」

「おめでとう!川口さん!」
お世話になった看護師さんたちからそう言われて、私は思わず泣いてしまった。

この1ヶ月看護師さん達には本当にお世話になった。看護師さんたちの凄さを身に染みて感じて、将来看護師になる、という夢もできた。

自分が思っていたよりもずっと、入院生活は充実したものだったのだろう。これも先生のおかげだ。

荷物をまとめて、お母さんが退院手続きをしている時、先生が部屋に入ってきた。

「雛、退院おめでとう。」

「先生、診察は!?」

「ああ、ちょっと抜けてきた。最後に挨拶ぐらいしたいなと思って。」

「嬉しいです。先生のおかげで良くなりました。ありがとうございます!病気の治療だけじゃなくて、勉強教えてくれたり、悩み相談にのってくれたり…本当にお世話になりました!

私、先生のおかげで看護師になるって夢が出来たんです、将来先生と同じ病院で働けるといいな、なんて…」

私は精一杯の感謝を伝えた。

「……あのさ、こういうの本当はダメなんだけど…」そういって先生に渡されたのは小さな紙袋だった。

「なんですか、これ。」

「退院祝い?家に帰ったら開けてみて。」

「…嬉しいです!ありがとうございます、藤井先生!」少し涙目になりながら、泣くのを堪えて、先生に満面の笑みを向けた。

「……あ、呼び出しだ。」
先生の携帯が鳴る。きっと先生に会えるのはこれが最後だ。

「先生ありがとうございました、さようなら!」

「元気でな、雛。」
先生は私に手を振ると、走って病室から出ていった。