好きです、先生。

〜side慧〜

ダメだ、ダメだ、ダメだ。

そんなことはわかっている。患者を恋愛対象としてみるだなんて、医者としてどうなんだろうか?
間違っている。だけどどうしても考えてしまう。

川口さんの、雛の、ことを……

頭も良かったし、顔もそこそこ良かった俺は高校時代からそれなりにはモテていたけど。

俺に近寄ってくる女の子はみんな、俺自身じゃなくて俺のスペックしか見ていないような気しかしなかった。

だから未だに誰とも付き合ったことは無い。

俺の事を見てくれる人をずっと探していたんだと思う。

雛は俺の事を見てくれている、そう感じた。
心からの笑顔で俺に接してくれるし、ありがとうとお礼の言葉も欠かさない。それにたまに冗談で俺を笑わせてくれたりして、雛といると楽しかった。

変わり映えしない毎日に光が差し込んだ、そんな感じだった。

だから勉強を教えるだなんていう、半ばこじつけに等しい口実で雛と一緒にいれるようにした。

でもその時から心のどこかで思っていた。

いつか終わりが来るということに、どこかで気づいていた。そして、それはどうしようもなかった。

まだ16歳の高校一年生に26のおじさんが、好意を抱くなんて、それはもはや犯罪に近いのかもしれない。

俺が今高校生だったら、なんて馬鹿みたいな妄想を何度もした。何度も何度もだ。

当然それは妄想に過ぎないわけで、現実に引き戻される度、悲しくなっている俺がいた。

それでもやっぱり今後雛のような人に出会えるとは思えなかった。だから、雛に気付かれないように、密かに思いを伝えたいと思う。

たとえ、気持ち悪いと拒否されても…