好きです、先生。

「ふおぉー!んんー!」

目が覚めた時にはもう10時になっていた。

昨日夜ずっと考え事をしていたのが原因かもしれない。

朝ごはんは片付けられてしまったようだ。

あんまり味しないけど、食べられないよりはマシだったのにな…

個室だから全然物音がしないとはいえ、こんなに寝てしまったのは初めてだ。

──ガラガラッ──

何故か無言で入ってきた先生。

「どうしたんですか?」

「あ、起きた?」

「え?今起きました。」

「そっかそっか。」

「寝てたこと知ってたんですか?」

「そりゃあ、ね?

先生なんで診察に来ますから。」

「あ、そっか。そうだよね。そうだそうだ。」

1人で会話する私は、衝撃のことに気づいてしまった。

「ってことは先生、私の寝顔見たってこと?」

「そうだよ。超口開けて寝てたぞ笑」

「いやぁぁぁぁぁあ!」

「うそうそ、可愛かったよ。」

先生はずるい、ただの患者にこんな思わせぶりなこと言うなんて。

「先生〜!」私はそう言って頬を膨らませてみせた。


「あ、ところで数値の方が安定してきてるから、来週あたりで退院かな?えっと……そうそう15日なんかどうだろう?」
部屋にあるカレンダーを見ながら先生は話を進める。

「…15日…。お母さんに確認してみますね。」
あと少しで退院か…。

最初は入院なんて嫌だ!って泣きそうなほど嫌がっていたのに、今では退院することを少し寂しく感じている。

退院しちゃったら、藤井先生に勉強教えて貰えなくなっちゃうのかな……

そうだよね、当たり前だよね。
だって先生はお医者さんで私はただの患者だもん。

でもなんか寂しいな…先生に会えなくなるなんて嫌だな……。

「川口さん?大丈夫?」

「はっ!また私考え事を!大丈夫です!」

「じゃあまたお昼に勉強教えに来るから!」
そう言って先生は部屋を出ていってしまった。