「好きだ」



 二人の唇が離れた瞬間、霞さんはハッキリとそう言った。

 わたしは何が起こったのか分からず、言葉を失った。


「探していた答えは……それだ」



 え……? どういう……こと……?
 わたしの事が、好き……?


「詩音と一緒に居る時、どうしようもなく胸が痛むんだ。この痛みの正体が知りたくて詩音と離れた」


 言葉を失って立ち尽くしているわたしから視線を逸らし、霞さんはさらに続けた。


「だが、いざ離れてみたら……別の痛みで、まるで心が無くなってしまったかのような感覚に陥った……」



 胸が痛む……って……それって……
 まさか……



「それって……霞さんは病気を患っているということ……ですか……?」

 わたしの返事で霞さんは、顔をしかめた。


「何故そうなる……?」
「だって……胸が痛むってことは……」

 霞さんは大きく長い溜息をつくと、口を開いた。






「俺は……詩音がいないと生きていけそうにないようだ」




 霞さんはそう告げると、わたしを優しく抱きしめた。


「やっぱり……それは当たっていたようだ」
「え……?」
「この胸の痛みは……好きという感情だ」


 あまりにも突然の出来事がたくさん起こりすぎて、わたしの頭はパンク寸前だった。
 これは……夢なの……?


 霞さんがわたしの事を好きなんて……そんな事……