触れたい指先、触れられない心


「と、とりあえず……縄解きますね……?」
「……助かる」


 両手両足の縄を解き、霞さんは解放された。
 そうだ……このまま逃げるっていうのは……

 ダメだ、見つかったらどうなることか……


「詩音」


 霞さんは真面目な表情でわたしの名前を呼んだ。
 その声にわたしの肩は小さく跳ねる。

 どうしよう……どっちに転んでもわたしは報われない……
 この先を聞きたくない……



「あのっ! 霞さん……探していた答えは見つかりましたか? わたしはどういう結末になろうが、霞さんに振られようが、お父様の愛人になろうが大丈夫ですので! お気になさらないでください!」


 わたしは必死に笑顔を取り繕って、嘘まみれの言葉を並べた。


「詩音、聞いてくれ」
「霞さん、遠慮しないでくださいね。わたしは霞さんが幸せならそれで……」
「詩音……」


「あれ……おっかしいなぁ……この部屋埃っぽくて……」


 どうしてこんな時に限って涙が……
 やっぱりわたしは弱いままだ……


「霞さん、わたしの事が嫌いなら嫌いって……」



「もう何も話すな」
「え? ……ッ!」



 霞さんはわたしの肩を掴み、口を塞ぐように唇を重ねた。
 今までの優しいキスとは違って、強く激しいキスにめまいがした。

 頭は真っ白になって、何も考えられなくて……くらくらする。


 どうして? 霞さんはわたしと破談するための理由を探すから距離を置いてたんじゃ……それなのにどうしてキスなんて……

 これはただわたしの口を無理矢理塞いで黙らせるために……?