どれくらい歩き続けたかわからない。


 だんだんと辺りが明るくなり
 道を歩く人が増えてきたと思った頃
 やっと『桃瀬写真館』の
 看板が目に入った。


「十環先輩? 大丈夫ですか?」



 私の背中に乗っかっている十環先輩は
 相変わらず
 呼びかけても答えてくれない。


 私は表札を確認して
 インターフォンを押した。


「はい」


「あの……百目と言いますが……」


「え? い、今行きますね」


 インター越しのから
 動揺した声が聞こえてきたかと思うと
 すぐに玄関のドアが開いた。


「十環くん? どうしたの?」


「ごめんなさい。私にもわからなくて。
 TODOMEKIの倉庫の前で倒れていたので」


「どうしましょう。 落ち着かなくちゃ。
 私が落ち着かなきゃダメよね」


 十環先輩のお母さんと思われる人が
 どうしていいかわからず
 アタフタしている。


「とりあえず
 十環先輩を布団に寝かせた方が……」


「そうね。
 そうしましょう。
 今、私が十環君をもらうわね」


「いいですよ。
 布団まで、このまま私が
 連れていきますから」


 『ごめんなさいね』と言われ
 私は十環先輩を背負ったまま
 2階に上がった。


 そして十環先輩の部屋に入り
 言われるがまま
 ベッドに十環先輩を下した。