白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集


「俺は、仲間から預かった大事なものを
 見捨てることなんてできねえ。

 十環が俺に
 お前を頼むって言ったんだ。
 お前が家に着くまで、見届けるからな」


「見たでしょ?
 十環先輩にとって、私なんて
 大事なものでも何でもないよ。
 だから、もう、放っておいて」


「バイクには乗りたくないんだよな?」


「……うん」


「じゃあ、俺も一緒に電車に乗ってやる。
 家の玄関上がったのを見届けたら
 俺は帰る。
 お前と離れたところにいてやるから。
 それなら文句ねえよな?」


「だから、私のことなんて構わず
 帰ってくれていいから」


「お前、頑固な奴だな」


「ハムハムだって、頑固じゃん」


「ああ。 俺は頑固だね。

 自分の思いを貫き通さないと
 いけない時ってのが、あるんだよ。
 TODOMEKIの総長にはさ。

 それがなかったら
 大事な仲間、守り切れねえからさ。
 俺はお前が家に帰るのを
 絶対に見届けるからな」


 結局、私は、
 その頑固な総長に従った。