白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集



 バイクが角を曲がったところで
 私はハムハムの肩を叩いた。


「ハムハム、止めて」


「は?」


「だから、ここで止めて」


 バイクが止まったのを確認して
 私は急いで、バイクから降りた。


「おい、どうしたんだよ?」


「ヘルメット、返す。
 私、電車で帰るから」


「桃華、バイクに乗れよ。
 家まで送ってやるから」


「だから、一人で帰る」


「そういうわけには、いかねえんだよ。
 十環に、お前のこと頼まれたんだから」


「嫌なの! 
 私が嫌なの! 

 十環先輩以外の人に
 家まで送ってもらうことが!」


 つい感情的になって
 声を張り上げてしまった。


 ハムハムに謝らなきゃと思うのに
 涙をこらえるのに必死で声が出ない。