十環先輩は笑ってくれている。
いつもみたいに
とびきりの笑顔で。
それなのに。
悲しく思えてくるのは
十環先輩に家まで送って
もらえないから?
それとも
十環先輩が本当に好きな相手は
私じゃないって
言われている気がするから?
「俺は別に
バイクで桃華の家まで
送り届けるくらいいいけどさ。
十環はそれでいいわけ?」
「公星さん、当たり前じゃないですか。
俺、最近寝不足なので
早く帰って寝たいんですよ。
桃ちゃん、送っていくのが
俺じゃなくてもいいよね?」
「あ……うん」
嫌だよ。
本当はすっごく嫌。
十環先輩と一緒にいたいから。
でも……
そんなワガママ言ったら
もっと嫌われちゃうよね。



