白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集


 十環先輩。
 私のことを心配して
 わざわざ迎えに来てくれたんだ。


 そのことが嬉しくて
 心がじんわり温かくなる。


 その時。


 手に持っていたミルクティーよりも
 冷たい声が、私の耳に届いた。


「桃ちゃん、ちょっと待ってて」


 なに?

 今の十環先輩の表情。


 鋭い瞳で
 睨まれた気がしたんだけど。


 十環先輩はいきなり走り出し、
 ハムハムに話しかけている。


 そして二人で
 私のところに戻って来た。


「桃ちゃん、お待たせ」


 は~ 良かった。

 十環先輩、笑っている。


 さっき睨まれたと思ったけど
 見間違いだったんだ。


 そう安心したのに……


「桃ちゃんの家まで
 公星さんがバイクで
 送ってくれることになったから」


「え?」


「だって俺が送ってたらさ
 電車に乗って、桃ちゃんの家まで歩いて
 また電車に乗って
 帰ってこなきゃいけないし。

 その後、自転車で走ったら
 家に着くのが何時になるか
 わからないでしょ?」