その人が向かった
 離れたところにあるバイクに
 目を向けた時、
 疑いたくなる物が
 瞳に飛び込んできた。


 まさかな。


 そう思ったのに
 どうしても確認せずにはいられない。


 気付いた時には
 バイクの前まで駆けて来てしまった。


「何しに来たわけ?
 お前は連れを待ってるんだろ?」


「このバイクって、あなたのだよね?」


「そうだけど」


「バイクに貼ってあるこのステッカーって
 もしかして……
 百目鬼(とどめき)?」


「お前、この漢字をよく読めたな」


 やっぱりそうだ。


 このステッカー。
 龍兄のバイクにも
 お父さんのバイクにもついてるし。


「彼が……
 元TODOMEKI(とどめき)の人で……
 兄……」


「マジか? 
 お前の彼って、誰?」


「桃瀬……」


「もしかして、十環か?」


「……うん」


 私の返事を聞いて
 その人は急に目を輝かせた。