「お前、こんなところで
 何やってるわけ?」


 誰?
 この人は?


 鋭い目つきで
 ニコリとも笑わないその男は
 私よりも少し年上くらい。

 
 しゃべり方からして、ヤンキー系。


 私のヤンキーセンサーに
 しっかりと引っかかったということは
 この人には
 不愛想に答えて問題なし。


「何って……別に」


「お前さ、女子高生だよな?
 夜中に
 こんなところにいるんじゃねえよ」


「平気だし」


「平気じゃねえだろ?
 ここらで最近、強盗騒ぎがあったの
 知ってるだろ?
 もしかしてお前、家出か?」


「家出なわけないでしょ?
 人を待ってるだけだから
 放っておいて」


「人って……援交?」


「はぁ?
 そんなキモイことするわけないでしょ!

 どんな頭してたら
 私を見て『援交』って思うんだよ」


「だってお前さ
 なんかヤバい空気まとってるしさ。
 普通の女子高生じゃなさそうって言うか」


「普通の女子高生だから。
 何回も言うけど、人を待ってるだけ。

 コンビニの中で
 待っててって言われたけど、
 立ち読みしてたら
 店員さんに睨まれたから、
 しょうがなく外で待ってるの」


「そっか、勘違いして悪かったな。
 で、連れはもうすぐ来るのか?」


「あと5分もすれば
 来るんじゃないかな」


「じゃあその間
 俺が付き合ってやるよ」


「いいよ。一人で待てるから」


「だからさ
 女一人でここにいるのは
 あぶねえって言ってんの。

 俺はあそこのバイクのところに
 いてやるから。
 お前の連れが来たら、帰るわ」


「……ありがとう」


 ニコリとも笑わず
 その男に睨まれ続けてるけど。
 悪い奴ではなさそう。


「お前さ
 ちゃんとお礼が言えるんだな」


「は? それくらい言えるし」


 その人は表情を一転させ
 アハハと声を出して笑いながら
 バイクの方に歩いて行った。


 目つきが鋭いし、口も悪いし
 最初は怖い奴かと思ったけど。

 案外、優しい顔で笑うんだ。

 なんか、天邪鬼な虎兄みたい。