桃ちゃん。 
 危ないでしょ。


 いくら中学の時に元番長で
 ケンカが強いとはいえ。


 暗闇からスタンガンを当てられて
 車に連れ去たれたらと思うと
 恐ろしくてしょうがない。


 しかもTODOMEKI倉庫から
 桃ちゃんの家までは
 電車に乗って
 その後は真っ暗な道を
 通らなきゃいけないし。


「桃ちゃん、近くにコンビニがあるよね?」


「ありますけど」


「そこにいて」


「え?」


「俺が家まで送るから」


「十環先輩に来てもらわなくても
 大丈夫ですよ。
 帰り道くらい、覚えてるし」


「そういうことじゃなくて。

 危ないでしょ?
 俺が心配でしょうがないの。

 15分以内に行くから。
 絶対にコンビニの中にいて。
 いい?」


「……ありがとうございます。
 待ってます」


 俺はジャケットを羽織ると
 一気に階段を駆け下りた。


 家族に声をかける時間すら
 もったいなくて。

 俺は誰にも告げぬまま
 桃ちゃんの待つコンビニまで
 自転車を飛ばした。