「虎兄、まだ何かあるわけ?
 早く、漫画の続きが読みたいんだけど」


「……」


「だから、何?」


「……ありがとな。
 あの時……
 背中押してくれてさ……」


 え? 

 ええ??

 虎兄が私に……
 感謝した???


 しかも、言い終わった後に
 恥ずかしさと戦いながら
 ホロっと微笑んだし。


 虎兄、そんな優しい顔で
 お礼を言えるようになったんだ。


 清香さんと
 これから上手く付き合っていくために
 虎兄なりに
 ちょっとは変わろうって
 頑張りだしたってことかな。


 男らしいところあるじゃん。虎兄も。


「どういたしまして」


 虎兄に向けて
 自然と笑みがこぼれた。


 でも虎兄は、私の笑顔を見て
 恥ずかしさが込み上げてきたみたい。


「もう、清香に会いに行くなよ! 
 いいな!」


 そう言い捨て
 虎兄は自分の部屋に戻っていった。


 タコみたいに赤く染まった顔で
 キツイこと言われても
 虎兄が可愛く見えるだけなんだけどな。


 不愛想で
 自分の思いを伝えるのが苦手な虎兄。

 そんなところが、私とそっくり。


 だから、虎兄が清香さんと
 ハッピーになれて良かったって
 心から想っているよ。


 そんな恥ずかしいこと。
 虎兄には言えないけどね。


  ☆『虎兄の不器用な恋』 おわり☆