「もういいよ。
 さっき、清香と別れたから」


「は?
 さっきって、今日?」


「そう。1時間前。
 龍兄が清香のことを好きなんだろ?
 紹介してやれば」


「何よそれ! 
 虎兄はそれでいいわけ?」


「いいんじゃね。
 だって桃だって思ったろ?
 俺と清香じゃ
 性格が違いすぎて不釣り合いだってさ」


「思ったよ。
 なんでこんな
 笑顔がキラキラして性格もいい子が

 無口で、不愛想で
 睨んでばっかの虎兄を
 好きになったのかなって思ったよ」


「な。
 龍兄はさ
 俺と違って、彼女になった女には
 ストレートに気持ちを伝えるタイプだろ?

 その上、族の元総長で
 俺なんかよりもケンカも強くて。
 人望も厚くてさ。

 俺はどう頑張っても
 龍兄には勝てないからさ」


「龍兄ねぇ。
 私がもし
 龍兄か虎兄のどっちかと付き合えって
 言われたら
『龍兄』って即答するよ。

 だってさ
 虎兄は上からガンガン文句言うけど。
 龍兄は彼女に対して
 甘々くらい優しくしてくれると思うから」


「だよな」


「でもね
 龍兄と虎兄の
 どっちが清香さんに合うと思うか
 聞かれたら、
 私は『虎兄』だと思う」


「は? なんでだよ?」


「それは清香さんが
 不愛想で、目つきが悪くて
 怒ってくる虎兄を
 大好きでしかたがないって
 感じだったから」


「なんだよ、それ。
 俺、悪いところしかないじゃん」