「清香、まだいたのかよ。
 今日は送ってやれねえから
 暗くなる前に帰れって……
 清香……?」


「これでもう
 私のことを嫌いになった?」


「え?」


「虎ちゃん、泣く女が大嫌いって
 言ってたもんね。

 だから私、どんなに怒られようが
 きついこと言われようが
 頑張って笑ってきたんだよ。

 それに怒られても
 絶対に最後は優しく頭を撫でてくれたし。
 その時の虎ちゃんが
 すっごく大好きだから」


「きよか……」


「虎ちゃんは
 本当に私のこと好きだった?

 今思えば
 付き合ってって虎ちゃんが
 言ってくれたけど。
 好きって言われたこと、一度もない」


「……俺は……」


「いいよ別に。
 ちゃんとわかってるから。

 虎ちゃんは
 ドジな私を放っておけないんだよね。
 ハラハラして目が離せられない
 妹みたいな存在だったんでしょ?

 困っている人を見ると
 放っておけないところがあるしね。

 そんなことで私と付き合うとか
 優しすぎだよ。虎ちゃんは」


「別に、そんな理由で
 付き合ってるわけじゃ……」


「でもさ、
 次の彼女さんには
 ちゃんと言ってあげてね。

 コスプレしてない時でも
 『かわいい』って。

 じゃあね、虎ちゃん。
 バイバイ」


「おい……清香」


 別れの時くらい
 虎ちゃんに笑いかけたかった。

 
 虎ちゃんの大嫌いな
 泣く女なんかになりたくなかった。


 それなのに……


 私の思いに反して
 涙がひっきりなしに溢れてきて、
 泣き顔を隠すように
 私はお店を飛び出した。

             ☆つづく☆



 虎兄は清香さんと
 どうなってしまうのか?


 続きは、次の回で。